バングラデシュの首都ダッカに「ハザリバーグ」という地区がある。
ちょうど首都圏中心部から南西部に位置するこの地域は、1971年にバングラデシュが独立する以前の東パキスタンだった時代から牛革加工工場が密集する地帯である。バングラデシュ国内の皮革の9割がここで作られ、加工されたものは国内への流通はもちろん、欧米、アジア各国へも輸出されている。
その中で最多輸出国先が我が国、日本である。主に革靴として加工され日本へ送られて来るという。その数、年間約400万足。
バングラデシュにとって皮革産業は繊維産業に継いで2番目の主要外貨獲得産業となっており、ハザリバーグはその重要な拠点として役割を担っている。
しかし、このハザリバーグは国際環境団体(ブラックスミス研究所)によって「世界で最悪の汚染地域」トップ10のうちの一つに数えられている。
この地区には約150~200 の工場が建ち並び、3万人程の労働者が従事しているが、作業で使用する化学薬品の扱いは素手、素足。作業遵守があるわけでも、安全性が確保された環境でも ない。また、街の至る所で使用済みの化学薬品を未処理のまま川に流し込む光景や、有害なゴミの放置、もしくは焼却処分を行う光景を見ることが出来る。その 結果、川はどす黒く変色し、ゴミとヘドロが道に散乱し、化学薬品の刺激臭と牛革の腐乱臭が街全体を濃く漂う。そのためここで長年働く労働者達は体のあちこ ちに変調をきたし、短命の者も多いという。
そのような現実の下で生産された革が今日もまた世界中を駆け巡る。
このような状況下でも働かざるを得ない人間の姿を捉えるため私はハザリバーグへと向かった。

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